森を抜けたらそこは一軒家でした。あれ、なんか普通だそれ!
ちょっと昔って雰囲気の洋館をぼーっと眺めてたら手紙が落ちてることに気づいた。
宛先は『森の外れの洋館 公爵様へ 御招待』。差出人は筧朔羅。速達で昨日の消印だった。森の外れの洋館ってここであってるのかな?
とりあえずオレは親切にチャイムを押して直接渡す事にした。
ジリリリリリリリ
わぉ、なんか古い感じ!
でも応答無し。
ジリリリリリリリリリリリリリ…
押し続けるのもそろそろ飽きてきたから、やっぱりドアにはさんでピンポンダッシュってことにして逃げるとするか!
そう思ってドアに近づいたら。
ガチャ、ドゴッ!!
「これはこれは、大丈夫ですか?」
タイミングよくドアが開いて見事頭を強打してしまった…。
「大丈夫ーって言えば大丈夫だけど、大丈夫じゃないって言えば大丈夫じゃないかもしんない…」
「一応診ておきますか?」
そこでオレは初めてドアを開けた人物を見た。
なんか聞き慣れた声だなーと思ったら蔵人だし!!
「やっぱ大丈夫の確率90%以上上昇中なんで大丈夫です!!」
「どう考えてもおかしいと思いますよ、それは」
そういや最初の頃はいっつもこんな会話だったよなーって、それってオレは変で蔵人がそれに慣れてきたみたいじゃーん!
(いや、事実そうだろう)
(そんなさっぱり肯定しなくても!!)
「あのMAKUBEXクンのドッペルゲンガーというのも実に興味深いですしね…」
そういやこの世界じゃみんな最初はそんな感じだよなー、うん。突然現れた双子のどっちかじゃねー。現実でもあーだこーだ言われたし。
なんて考えていろいろ思い出してたら連行されていた。きっとこの事を現実逃避って言うんだと思った。
「脳神経に別状はなさそうですね…病院で検査してもらいますか?」
「あっ、オレ元々こうだから大丈夫!!」
自分でそう言っといてすっごい悲しくなってきた14歳のある日……。
悲しくなってきたついでに、コーヒーの香りが漂ってきた。
いつの間に淹れたんだろーと思ったら運んできたのは時雨さんだった。(しかも自分のだけは紅茶みたいだった)
いつもみたいな流れるような動作でオレと蔵人の前にカップを置いて、蔵人の隣に座った。
(多分だけど)現実逃避してたから初めてちゃんと見回すと、やっぱり雰囲気は現代的よりは近代的なんだけど、住んでる人が住んでる人だけあって生活感があんまり感じない。
蔵人はコートと帽子がないだけであとはいつもと同じ。時雨さんは白じゃなくて青のシャツで珍しくボタン1つあけててたまにしてるネクタイは今はしてない。だた、青だからかこの部屋の中では目立ってる。
ついでに、1つ見つけてしまった。
時雨さんの鎖骨、っていうかシャツの間から見えるとこに所有を示す印。
なんていうか………ホントに赤くなるものなのか…!って、そこじゃない!
ひょっとすると、さっきなかなか出てこなかったのって関係してたりすんのかな…?
そう思ったらものすごく居づらくなってきた。どーしよー…。
「ところで、何か用件があるのではないですか?」
「あっ、そうだった」
早いとこ渡してここを出よう!
ずっと持ちっぱなしだった手紙を蔵人に渡す。
「これ、落ちてたんだけど速達だったから早い方がいいかなーって」
「…そうですね、ありがとうございます」
差出人を見て頷く蔵人。
ってことは公爵は蔵人なのかー。あれ、ホントは夫人だったような…まあいいか。
封を開けて中の手紙を読む蔵人。
ちょっと待った。そうなると時雨さんはなんだろう?さっきから結構省かれる役も多そうだから後で重要になりそうなのは…。
「これは、今から行かなくてはなりませんね」
「…猫?」
オレと蔵人と、呟いたのはほとんど同時だった。
この2人を書きたいがためだったりする。ちゃんとやるなら他の部分もやりますが…!
思ったが、ここのベルはピンポンダッシュ防止になるかもしれない。ちょっとだけ。(どうでもよろしい)
2004年11月中
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