「あっ、クライムさんだ!」
「ターンか。久しぶり…」
港に停泊する豪華客船の入り口、クライムに気づいた金髪の青年が手を振る。
大きな荷物(大半は電伝虫関連)を携えたクライムが手を振り返す。
しかし、クライムが言い切る前にターンはクライムの元へ走り荷物の半分をつかんだ。
「急いで!今メアちゃんが食い止めてるから!!」
「…アレをか?」
「アレをです」
クライムが深い溜息をつきターンの横に並び走り出す。
「俺、ステイにしか教えた覚えないんだけど…」
「クロースさんが黒電伝虫で聞いてたそうです…」
「あのホスト紛いか!!」
「その情報を買ったそうです…」
「買うなよドクター!!」
悪徳商法じゃねぇかー!と走りながら嘆くクライム。
「でも、ただ買ったんじゃなくって交換したんだそうです」
「取引か!!」
「それと、最近は海賊船の襲撃がなくてフラストレーションたまりまくってるみたいです…」
「なくて普通なんだよあのアホがァ!!」
「だから急がないと、捕まったら戦闘は避けられなくて床に傷がついてオレ達が大変って」
「お前の都合かー!!」
「言ってたのはメアちゃんです…」
「あっちかー!!」
一通り話した後、息を切らしながらクライムが肝心な事を尋ねる。
「それで、ステイは、無事か……?」
「大丈夫です。クライムさん…運動不足…?」
「お前が、何度も、叫ばせ、たんだろ!酸欠!」
「あっ……ごめんなさい」
『ターン!それといたらクライム!聞こえてるか?!』
ふいに、各所に設置されたスピーカーから男の声が響いた。
「メアちゃん?!もしかして何かあったのかな…」
「さしずめ……」
『悪ィ!逃しちまったからがんばって逃げ切ってくれ!』
電伝虫のスピーカーからはその後も笑い声が漏れていた。
「……買収されたな」
「メアちゃん…」
「もっとも、彼には一銭も払うつもりはないですがね」
「だろうな……」
「いっつもそんな感じだしねー…………って!」
2人は立ち止まり突然会話に参加し始めた人物に立ち向かう。
「沸いて出やがったか、ドクター」
「相変わらず失礼ですね」
「相手が相手だからな。仕方ねェか…」
「クライムさん!」
「荷物頼むわ、ターン」
ドクターがメスを取り出したのを見て、ポケットに入れていた手袋をはめるクライム。
しかし、クライムが手袋を左手にはめていたところでドクターのメスを持つ手に絃がからみついた。
「おや、しばらく会わないうちに卑劣なことまでするようになられたのですか」
「いや、オレ手袋してる最中だから。あと俺のは絃じゃなくワイヤー」
「あなたにだけは卑劣だとか言われたくないですよ!」
クライムに背を向ける形で女性的な雰囲気の人物が現れた。
「リファちゃん!」
「お久しぶりです、クライムさん」
「元気そうだな、リファ」
「ええ。そんなことよりもここは僕に任せて下さい!」
「早いとこステイに会いたいから頼むわ」
「そうは――」
「あのな、0.1秒もあれば俺には十分なんだよ」
「!」
「あっ、あれっ、オレも?!」
「僕までッ?!」
不幸にも居合わせた人間(もちろん乗客船員構わず)も含め、その場にいた全員が身動きを取れなくなっていた。
「悪ィ、無差別攻撃で。誰にしろ邪魔されたかねェんだわ」
笑みと荷物を残してクライムは記憶を頼りに医務室へと駆け出していった。
ドクターの名前はおもしろ半分で出してない。ということにしときつつ思いつかない。(どっちも正解)
半分くらい元ネタGBでお送りしております。(デジャヴを感じたらそのせいですね!)
2005年1月中
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