「まず最初に見た時点で違和感を感じた」
蛮、銀次、花月の3人は時雨の5m程後方を時雨に気づかれぬ様尾行していた。
「だからクソ屍に食われたかと思ったがそうじゃねぇ。だったらアレはおかしいことになる」
「えっ、なんで?」
「駅で話しましたしそれ以後ずっと様子を伺ってますが、これといっておかしい点はないですよ」
いや、テメェの場合は特殊フィルターがかかってるだろ…。
そうツッコみたくなったのを抑えた蛮だった。
「絃巻き、時雨は普段のサイズの白いシャツを何枚持ってる?」
「6枚ですよ」
「確か青も持ってたよな?」
「青は濃い目のと薄いのの2枚ですよ」
なんでカヅっちゃんはそんなこと知ってるんだろう……。
銀次はそう思わずにはいられなかった。
「濃いのと薄いのか。だったらどっちも見たことあるな…」
「それがどうかしたんですか?」
「時雨は性別をごまかそうとするからいつも大きめの服を着てるだろ?だったら確実に大きいサイズの青の方を取るはずだ」
「そういえばそうだよね。時雨ちゃんだったらいくら急いでても着てから小さいってわかったら着替え直してそうだし」
「銀次の言ったとおりだ。いくらホストの邪魔があったとしてもそれくらいするだろ」
「では、時雨さんは……」
「なんかあったな。誰が絡んでるかは大体予想つくだろ」
「すごいよ蛮ちゃん!よくわかったね!」
「………」
「ま、後つけてりゃそのうちわかるだろ」
確かに、そのうちわかるかもね。
彼等の5メートル程前方、その会話を盗聴器で拾っていた時雨はそう呟いた。
「……鏡クン?」
無限城下層階、MAKUBEXは己の目を疑わずにはいられなかった。
「ちょっと1部屋借りるよ、MAKUBEX」
「えっ、ちょっと、鏡クン?!」
振り返ることなく鏡はドアを閉じてしまった。
「…幻覚じゃないよね、朔羅」
「ええ」
「さっきも見たで、鏡はん。めっちゃ殺気放ってたわー」
「その時は持っていたのか?」
「持ってあらへん。どっかで買うてきたんやろ」
「ハードディスクと携帯か…」
「あの情報屋でもないのに何に使うつもりだ?」
「関連はしてるだろうけどね…」
彼等が関連どころではなかったと知るのはそれから数日経ってからになる。
考えてみればMAKUBEXサイドの方にやってきたのは時雨なんだから計算外なのだった。
こういう時設定によっては楽になる。まだまだかかりそうなんだけど、これ…。
2005年2月中
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