「蓮藤先生、着信入ってますよ」
僕はコピー機の不調を聞きつけ解体していた蓮藤先生に声をかける。
先生の机の上ではマナーモードにした先生の携帯がガタガタと震えている。
「…2時だろ?なんでまたこんな時間に…」
時計に目を向けてからドライバーを持ったままこちらに向かう先生。
とりあえず、ドライバーを回しながらは危険なのでやめた方がいいと思います。
僕は机から携帯を取り上げ先生に投げ渡した。
「悪い、花月」
「いえ」
僕から携帯を受け取った先生は真っ先にフロント部分のディスプレイを見た。
「…誰だ?」
見覚えのないナンバーだったのか、しばらく持ったままでいる先生。
しかしそれでもなお震え続けたので先生は折りたたんでいた携帯を開いた。
「はいはい」
相手の第一声を聞いてすぐ、蓮藤先生の表情が変わった。
「どうしたんですか?蓮藤先生」
「いや……」
大きく息を吐き出して、先生は携帯を持ち直した。
「久しぶりだな、葉山」
「声を聞く限りじゃ記憶と寸分の違いもないな、霜夜」
『こんな時間に何だよ。しかも携帯の番号は教えた覚えがねぇぞ』
「そりゃ蓮藤の奥さんに聞いたからな」
『…そういや今日は夜勤か。ついで忠告受けなかったのか?』
「何も今日聞いたとは言ってない。大体こうしてちゃんと出れる状況だったんだから問題は無いだろ?」
『…確かにな。で、何の用だよ』
「コイツに限ってするとは思いもしなかったできちゃった結婚をして新婚旅行すらしてないだろう蓮藤クンにはきっといい話だろうな」
『余計なお世話だっつの独り身。とりあえず今は作業中だから夕方かけ直す』
言うだけ言って電話は一方的に切れた。
しかし、確かに葉山刹那は独身ではあるが最後に連絡を取ったのは10年以上も前の事だ。
「アレは健在か…でもまあ、出すだけ出しても困ることはない、か」
今頃が1番だしな、と付け加えたその顔には幼さが残っていた。
「…花月」
「なんですか?」
「あとで花月になんか重大な頼み事をしそうな気がする」
「それは構いませんが…何故ですか?」
「それが思い出せたら楽だよな…無理矢理もみ消しちまったみたいで出てこないし出てきそうにもねぇ。とりあえず予告だけしとく」
「…わかりました」
首を傾げつつも、僕は頷いておいた。そしてその選択はある意味正解であったことを全てが終わってから思い知った。
実はそうだった。それもあって霜夜氏の地位はああなのかもしれない。(頭上がらないというより上げられない)
平穏な空気じゃないですがばっちりギャグですから。でもいつなんだこれ。
2005年2月中
back