「…何してんだ、ターン」
その場に辿り着いてからのメアの第一声はそれだった。
「遅いよメアちゃん!」
「クライムは行ったんだろ?だったらいいじゃねェか」
「確かにクライムさんはステイさんのとこに行ったしキズもつかなかったけど、メアちゃんは裏切ったじゃないか!」
「よく考えてみろ、ターン。はっきり言っちまえば、この場合俺様じゃ『時間を稼げる』だけであって『食い止める』ことは難しい。無事にあの姉ちゃんのとこまで辿り着けたとしても後から沸いて出てきちまえば意味がねェ。だがクライムには強い目的がある」
「今日はいやに『沸いて出る』という表現が多くないですか?」
それはあらゆる意味で仕方ないのではないだろうか。ドクターの言葉を受けてリファは密かにそう思った。
「………」
「この場合本人が早いうちに片付けちまった方がタイムロスにもならない。つまり、始めっから全部作戦のうちだったってワケよ!」
「……そっか!さっすがメアちゃん!」
「当ったり前だろ?!」
「絶対騙されてますよ、ターンさん…」
「あの時の顔も今の顔もまさしく金目当てですよ」
得意顔で笑うメア。そのメアに尊敬の眼差しを送るターン。メアとターンに半ば呆れた目線を送る2人。そして、巻き込まれてしまった他の乗員、乗客達。彼等が1番哀れである。
一体何時になったら開放されるのか…その答えが出たのは20分後だった。

同じ頃、クライムは船内病院のフロアに辿り着いていた。
しかし病室や診察室の配置がクライムの記憶の中のものとは多少異なっている。
「こういう事は教えてくれよ、フォール…」
「あれ、クライム君?」
肩を落としてナースステーションに足を向けたクライムを白衣を着た女性が呼び止めた。
「…ネストさん」
「随分早いんじゃない?放送かかってからそんなに経ってないと思ったけど」
「まあそりゃあ。それより、ステイは?」
「2つ先の角を右に行ったら内科診察室があるからそこ。あと、レイルがいるから大丈夫よ」
「レイル…確かあんたの従妹だったか。何が大丈夫だって言うんだ?」
「私もまっさかそんなことになるとは思ってなかったんだけどねー。あれだけステイにお熱だったから」
「…そりゃ、ああいうことか」
「そういうことよ」
会話を聞いていた看護婦は本当に通じているのかと首を傾げるばかりだった。
「……遊ばれてんじゃねェかよ、俺は!」
「壁を蹴らないで早い行ってあげなさい。今日はもう閉めちゃっていいから」
「ついでに通行止めしといてくれ」
「ちょっ、ちょっと、クライム君!」
ネストの呼びかけにも応じずクライムは走って行ってしまった。
「…通行止めするんじゃなくて、ステイの部屋に移りなさいよ」


メインの人々を出せないからって一般の人々を出してみる。いっぱいいるんだが…。
そっちなんですかネストさん。次はここじゃやらないで正式にupしそうですこれ。

2005年2月中


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