夜。今日は珍しく家族3人全員そろっていた。そろっていたところで会話がないのは同じだが。
我が家ではテレビは本当に一応あるものでしかない。だから今日もBGMは俺のノートパソコンと時雨が使ってるデスクトップのキーボード音だ。
そこに、珍しく電話の呼び出し音が加わった。
「蓮藤です」
受話器を取ったのは1番近い時雨だった。
「………しばしお待ち下さい。父さん、電話」
「どこから?」
「葉山って人から」
「………」
またあれか……。
「適当に切っといてくれ」
「今出られませんが。………出せだって」
「しつこいからな、あれも…」
時雨から受話器を受け取る。今そうしないと向こうの時間がある限り粘ってくるだろう。
「なんだよ」
『途中で切るなんて酷い奴だな……』
「話が見えてこねぇんだよ」
『話も何も、主題はもう話してしまったのだがな』
「そんなもんあったか?」
『あったさ。旅行に行ってこい。それがまさに主題だ』
「なんでそんなことでわざわざ電話してきてんだよ」
『熱海の方にうちの銀行の保養所があるんだが、そこがなかなかいい所なんだ』
「話を聞けお前」
『もともと1組しか泊まれない所だから問題ないだろ?』
「話を進めるなお前」
『そんなに遠いわけでもないから2泊か1泊で十分だろう。ぜひ甘夏もちを買ってきてくれ』
「もう決定なのかよお前。しかもそれが目的か!」
『とりわけ探さなきゃならないものでもないから頼んだぞ』
「聞いちゃいねぇよ!」
『甘夏もちをバカにするなよ霜夜。アレもお勧めする一品だ』
「何気に広める気かアレは。いやそうじゃねぇよ!」
『案内書を送っておいたから届いたら読んでみてくれ』
今度は向こうから切られた。
「……なんだったの」
「甘夏もちの勧誘」
「…は?」
「甘夏もち?」
あながち間違ってなかったと思う。
そして、また電話。タイミングからしても多分…。
「蓮藤ですが…」
『悪い。1つ忘れていた』
「その前に行くとも言ってねぇよ」
思ったとおり、葉山だった。
『さっき声を聞いた分では娘も随分大きくなったんだろ?』
「5月で15だよ」
『だったらなおさら、夫婦で行ってこい。娘は俺があずかるから』
結構おいしいんで甘夏もち是非。あとラーメンもおいしかったby.アレ(まだ続きますよ)
2005年4月中
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