内科診察室は本当に曲がってすぐだった。呼吸を整えてから、掛けられていたプレートをひっくり返し、ノックもせずドアを開ける。
デスクに向かって何かの書類を書いているステイの姿を確認してから、後ろ手でドアを閉めて鍵をかける。
「ステイ」
「…暑い」
「あ、はい…」
後ろから抱きしめたら、すぐにそう言われた。確かに走ってきて体温が上がっているが、久々の再開で最初の言葉がそれって…。
「…予想より早かった」
「ん?ああ、動き止めてきたから」
そう言いながら診察用のベッドに腰掛けた。
「………」
案の定の溜息。まあ、そうだろうな…。
「仕方ないだろ、盗聴されてた上に邪魔まで入ってきやがって」
「それでも早かった」
「リファが乱入してきたからだろうな。あれで隙ができたから」
「ああ…」
ステイによると、リファは最近一層この船の乗員らしくなってきたそうだ。イコール変になってきたということなのだが。(第一この船のオーナーが変人だ)
「あ、それと」
「レイル」
「と言うよりはあのヤローの方だな」
「あれの考えていることは私にもよくわからない」
軽く首を振りながらの返答だった。この船の中でアレと最も付き合いが長いステイがわからないんじゃ、望みは皆無だろう。
「どこまでが本気なんだかわかりにくいんだよな…」
ステイの時もそうだったし、今もそうだと思う。裏があるようにも見えるし、それにしては距離が近いようにも思う。
「まあ、ヤツなりにいろいろあるのかもしれないけどな…」
この言葉に対してステイは頷くだけだった。結局俺達はアレの事をほとんど知らないし、知ろうと思ってもいないのかもしれない。
しかし今はそんなことはどうでもよく。
「ステイ………」
再び、今度は正面から。もう拒まれることはなかった。
「…ダメ?」
「嫌」
「あ、嫌…」
そのたった一言は俺の予想を遥かに越えた音と破壊力を持っていた。


結局拍手で終わらせました。これでいいのかと何回脳内討議をしたことか…随分殺ぎ落としたように思います。
しかもまだ決まってません、ドクター。このまま突き通すのもまたおもしろいからいいのですが。
最後に関しては流石女史としか言えない。とある2人の如くきっと本人達としては普通なのになんかがずれているみたいです。結局誰が原因なのか、わかるようなわからないような。

2005年7月中


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