路上スタンダードハイ

「律、シートベルトはしたか?」
「えっ?」
わたしは車に乗る時はいつも後部座席にこじんまりと座ったことしかなかった。
ただし、それは座ることが出来た時の話。それ以前に前回車に乗ったのは何年前だっただろうか。
人数の都合。成長して場所を取るようになった。様々な理由で乗車を拒まれ続けたから恐らく最後に乗ったのは4歳5歳。その辺だったと思う。
あの時は人数が多かったから出来なかったけど、本当は後部座席でもシートベルトはしないといけないのかもしれない。
そう思ってシートベルトに触れた時。
「出発するよ、りっちゃん」
新瀬さんがアクセルを踏み込んだらしく、わたしはシートに押し付けられた。
見慣れた道を猛スピードで駆け抜けてゆく。それは清々しいものでもあるけど、命の危険と隣り合わせでもある。
「こうなるとは思っていなかっただろう。俺も初めて乗ったときは驚いた」
「大丈夫なんですか、葉山さん…」
「一応、新瀬の免停歴と加害歴はゼロだ」
これでも。
葉山さんが最後に付け加えた言葉にわたしはその理由がどちらなのか定められなかった。
「なんで、新瀬さんに運転任せたんですか」
もちろんわたしも葉山さんも新瀬さんには聞こえてない筈の声で話している。
「寝ずの運転の危険度は新瀬の運転の危険度と大した差はない。精神的に、という意味に過ぎないが。
それと…早いうちから慣れていた方が身の為だ。高速のサービスエリアについたら交代するから、それまで待っていろ…」
サイドミラーごしの葉山さんの顔は、うっすら血の気が引いていた。


葉山さんと新瀬さんと律。オリジナルサイトがメインの人々も普通に出てきそうです。
新瀬さんはスピード狂。うちってスピード狂とスピード狂予備軍の数が他より凄そうだ。ちなみにお題はノリです。

2005年8月中


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