リモコン紛失事件ファイル vol.3 カオス

「開けて下さい、瀧さん」
暗先さんが隣の部屋のドアをノックした。瀧さんはすぐに顔を出した。
「やあ、暗先くんと戯言の」
「やあじゃないですよ。なんかもうここまですごいことになってるし…」
暗先さんが足元を見る。床のほとんどが黒が浮かんだ白…言い換えるとおびただしい量の紙で埋め尽くされていて、ところどころ飛び石のようにカーペットの色が見え隠れしている。とりあえず移動は可能になっているようだ。というより、あの人の心理で考えたら紙は踏まれたくないのだと思う。妙な部分で几帳面な人だ。
「この紙、何処から持ってきたんですか…?」
「持ってきたのとこっちに来てから買ったのとが入り混じってるね。先に答えておくとプリンターは持ち運びが楽なやつを持参」
「紙を持っていくのは僕だけどね…」
「帰る時はどうするんですか?」
「運ぶのはちょっとどころでなく重たいからね。いつも宅配便に頼んでるよ」
「箱に詰める作業をするのも全部僕だけどね…」
「つうか、パソコンに保存しておけばそれでいいじゃないですか」
「それで行方不明になって書き直した原稿がいくつあったことか…」
「タイトルつけるのに面倒くさがるからでしょうに…」
「この大量の紙の中から探す方が大変なんじゃないですか?」
「本文を読めば思い出せるしファイル名とページ数が下に書いてあるから大丈夫だよ」
「それをまた放置するからこうなるんでしょうに…」
これ以上続けると暗先さんの苦労話になりそうだったからやめておくことにした。


苦労してんな、暗先君…特性故によくわかってませんが。時に知らないことが幸せなこともある。(それで済んだら世の中平和だ)
キリがよかったんで切ってしまいました。とりあえず間に合わせたかったというのもある。(………)

2006年3月中


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