特に何かあるわけでもなく夜になった。これまでに特に印象的だったことといえば、勧めるだけあって景色がよかったくらいで、意外だったのは風呂にシャンプーが置かれてない事くらいだ。旅行に行く時は(と言っても仕事含め修学旅行しかないが)必ず持って行くようにしているから問題はなかったが。その辺はこだわる人間がいるからかもしれない。
憂は風呂に行ったばかりだ。正確には、シャンプーを取りに来てまた風呂に行ったばかりだ。石鹸だけ置いてあるらしい。それならシャンプーも置けよと思う。
そこに、携帯の着信音が鳴った。光っているのは俺の携帯の方だった。
ディスプレイには「蓮藤怜夜」の表示。なんとなく葉山じゃなくてよかったと思ってから、携帯を開く。
『あ、兄貴?』
「怜夜か」
『満喫…はしてなさそうよね、どこにしたって。なんかあったりとかした?』
「…思ってたよりは何事もないな」
『大事って大概自分で起こさない限り起こんないわよ。じゃなかったら近くにトラブルメーカーがいるか』
「まあな」
改めて考えると俺の周辺はトラブルメーカーだらけなのかと思った。
『大事がないんだったら、珍しく刹那さんが兄貴にとっていい事してくれたって事よね』
セツナサンって誰だっけ?と一瞬思って、すぐにいつも葉山かアイツって呼んでいたことを思い出した。
「お前、葉山の事知ってたっけ?」
『え、知ってるってば』
「そうだったか?」
『兄貴年賀状送ってきた人にしか返さないでしょ?それで教えてくれって電話くれたし』
「憂から訊いたって言ってたけどアイツ」
『だから、携帯じゃなくて家の方を教えたの。その方が確実でしょ』
「ああ」
家の電話の使用率があまりに低いから忘れてた。そういえばアイツは家にも掛けてきた。
「それでたまたま憂がいたのか」
『そうなんじゃない?』
「人との関わり自体少ないから普通に知らないと思ってた」
『確かに他に知ってる人って波児さんとか大学の同級の人中心だけど』
「いろいろあったからな…その前になんで葉山がお前の連絡先を知ってんだよ」
『兄貴と私は違うからね』
ごもっともだ。
『そうじゃなくてもあれだけのことがあったら忘れられるわけないでしょ』
「そりゃ、まあ……」
当然のように返事してから『あれだけのこと』がどういう内容だったかを思い返す。
「…そういやそうだ」
『? なんか思い出したの?』
「悪い。掛け直す」
『えっ、ちょっと』
怜夜が言い切る前に電話を切った。そして着信履歴からあの男の番号を探して掛ける。
出ない。やられた……。
「便利だと思ってたんだがな…」
習慣づけるようにしてまで身に付けた特性が今ばかりは憎くて仕方ない。
葉山ははっきり言って変人だ。それと同時に、変態でもあった。
特にこだわりはない夫婦。あんま老化してなさそうだしな、あの2人…。(つうか女史は老化したらなんか嫌な気もする。氏は別にどっちでも)
石鹸だけ置いてあったりってないですか?そうだったような気がするんだけど、覚えてない。その辺の違いは規模やら値段やら人の出入りの多さやらが絡んでるのではないかと思います。経営者が近くにいるわけでもないのでそんな保養所の事情なんで知りません。(適当に書いてます)
怜夜ご無沙汰。字違いならもうちょっと最近に書いてるけど。ちょっと忘れてたけど書いてない分自由でもあったりする。
一応半分は越えてるんだけど(旅行前が長い)、後始末が必要な気がしてならない。書きたい部分もあるし。
2006年4月中
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