間抜けの反対は隙だらけ

「『ナイトバス』が」
「やっぱり別の人を置くんだ」
何回も口にして覚えきってしまった言葉を遮られた。杖腕を挙げたこの客は常連のようだ。スーツに大きな帽子が不自然な女性だ。
「新入社員、ではないよね」
「はい、人材派遣会社『エムブレマーズ』のメフィと申します」
「仕事出来そうって感じだね」
「出来たら登録社員なんてしてませんよ」
「まあそうだね」
そこは本来否定する場所のような気がする。
「ただ前のの方がよっぽどそれっぽいだけかもな…間はなかったけど代わりに隙はいっぱいだったわけだろうし。あ、運転手と話してその後仮眠取りたいから最後でいいよ。行き先はリヴァプール…いや、部屋借りるか。ロンドンの方で」
俺に金だけ渡して彼女はバスに乗り込んだ。渡された金額はぴったりロンドンまでの運賃だったから飲み物はいらないのかと思ったら、彼女は勝手にミネラルウォーターを出していた。
「足りないですよ、お金」
「前のの残ってる給料か手当てかツケから引いてあるから問題ないよ」
そのまま彼女は奥へと進んでいき、空いてるベッドにバッグを置いた。
「おい、バス出していいか?」
「あ、どうぞ」
運転手に言われてすぐ俺は手摺を掴んだ。爆発音と共にバスが発車する。こればかりは当分慣れそうにない。
彼女は…運転席側に身を乗り出している。何事もないかのように水を飲んでいた。


大手人材派遣会社『エムブレマーズ』。本来はマグルの会社だがアカネイア本社の上層部に魔法使いがいるため魔法使いの社員がこういう仕事を請け負ったりもする。しかし魔法使いを必要とする仕事だけは各支社でなく本社から直接出されるから内部でそれを知る者は少数。地方ごとに各支社が置かれており基本的に各々の地方で活動する。本来この件はアカネイア本社の管轄だったが、今回は急用だったためテリウス支社のメフィに要請が。他にバレンシア、ユグドラル、エレブ、マギ・ヴァルという名の支社がある。
彼は最近登録したばかりで力仕事は不向きだが、様々な方面の知識(特に宗教関連)と経験を持ち合わせていていることもあり即戦力になっている。
ただし、本性で全てぶち壊し。
なんて事を考えてました。これを書きたかったんですすみません。楽しかった!
元はグレイルカンパニーとか考えたけど人数が少ないのと魔法使いなのはセネリオとメフィだけになりそうだったので。これだとミストは社長の娘でキルロイは普通の社員になりそうな気がする。(多分楓藤の中で前者2人は魔法を使って後者2人は杖を使うイメージが強いから)(メフィは初期は神官なのに笑いながらリザイア連発してそうなイメージが強くて…ついでにミストは杖で殴っちゃうイメージ)
比較的にしたらなんか可哀想なことになったな、スタン…メフィが属性的にメイビーに割と近いのもあるんだろうけど。横道に逸れすぎた。次はメイビー視点で。(2006.06)


前2つよりは手加えた感じ。でも『エムブレマーズ』のとこにしか触れてない。というか内容的にもそれしかない。これはこれで(自分が)楽しいからいいんですって。次で流れを戻します。(2006.07)


2006年6月中
2006年7月中(改稿して再掲載)


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