向こうで冷凍春巻きなんての売ってるか少し気になる

本社からの要請だったから本社の寮を一時的に借りる事も可能だったが、それはしなかった。姿現わしを使えばすぐに向こうに行けるし、何より離れたくない。そして離れられない。本社の『常に素早い対応』という体制は崩してないから問題は無い。
充てられた仕事の都合で昼夜逆転を余儀なくされているが、前から毎日ちょっとずつずれるような生活をしていたから問題はない。
そもそも原因はあの大馬鹿か。戻ってきたら文字通り絞めてやるか。所在もわかったし。あの子もよく愛想つかさないものだ。大馬鹿相手に。
つうか俺にまでくるのかね魔法省は。人と生活リズムがずれてくるから自然と聴ける人間は少なくなってくるのかもしれませんがね。仕事が忙しいので今度にして下さいみたいな意味合いのことを俺としてはやんわりと言っておいたけど。数年疎遠になってた、半ば縁が切れていた、まあ完璧かどうかは別として、向こうの意思で。そんな人間の証言なんて役に立つのかどうなのか。結果的に過去の殆どの人は俺と縁切れている。今となっては学校関係者はほとんどだ。
「丁度出勤、か」
「……今帰りか」
「ああ」
基本的に俺のいるテリウス支社の寮は2人1部屋だ。他の支社や本社は多かれ少なかれ違ったりもするらしいが、とにかくここは2人1部屋が基本だ。1人がよかったのだが最初に割り当てられて数日経つまでは特に何か思うことがあったわけでもないし、どうも空き部屋もなかったようだ。あと割り当てた人間によると光熱費削減もあったらしい。
仕方ないからなんとか追い出そうといろいろ試みているが、思うようにはいかない。というより今までが簡単すぎたのか。
「これから食事か?」
「……それがどうかしたか?」
「ならば私も行こう」
「…………」
「気に入らなければ放っておけばいいさ」
「……いや、行こう」
放置はしたくない。ただでさえもこれから外に出るのに放置なんてしたらどうなるかわからない。

2人揃って部屋を出た。まだ日は沈みきっていない。この寮は社員の血縁なんかも普通に住んでたりするから外では子供が遊んでいる。稀にあんた等本当に血縁か?と思う場合もあるが、深く考えるだけ無駄だろう。知ったところで何も得はない。
この寮に給仕いないから『食事の時間帯が重なる数人でグループになり、準備担当と後始末担当に別れ各々の分担をこなす』というのがルールとなっている。今の俺のような昼夜逆転の人間もいるからグループ管理は全部食堂のホワイトボードで行っている。時間帯が重なっても主食が違ったりと食習慣が違う場合もあるから基本的に小人数構成だ。これだけ生活習慣にずれがあるから給仕を雇えないのだろう。
光熱費と違い食費は基本的に全員定額。全ての部屋に簡易キッチンと備え付けの冷蔵庫があるが小道具は備え付けではないし、食堂の調理道具は業務用。だから経費の面で考えると食堂での調理・食事が1番の得策と言える。
ただし、食堂を食事目的では利用しないと契約した場合は食費は取られないし、キープ代を払うことによって好きな物を好きなだけ発注し食堂で保存出来る。ただ、量が少ないとキープ代を払うよりは個人で買って保存する方が安いから利用する人間はそう多くない。キープで多いのは、個人で簡単に調理できる冷凍食品や、大勢で話ながらつまむことを目的とした菓子類だそうだ。ちなみにコーヒー・紅茶等この場で作る必要がある物は定額の内に入り、清涼飲料水等液体の時点から商品である物は個人負担だ。
最初グループごとに食費も分ければいいという案もあったそうだが、入れ替わりが激しすぎるということで不採用になったと聞いた。実際今食堂にいたのはカウンター席にたった2人だった。あと1時間もすればもっと賑わってくるのだろう。
「アイクとセネリオか」
正社員と人事担当の2人だった。スケジュールの都合でこの2人とはここ数日顔を合わせる事が多い。
「……最近セットが多いですね、あなた方」
「コミュニケーションは大切だろう?」
当たり前だが俺にその気はない。胡散臭い。
「ソーンバルケとメフィか…なんか食うか?」
正社員の方はやっと顔を上げた。キープ制を利用する少数のうちの1人が彼だ。俺以外の3人は1時間後のグループに分類されるが、キープ分は個人管理ということで早いうちから食事を始めている人間が多い。あとの2人は口実付けのためというのが大きい。
「あんま時間取れなさそうだからそこから少し貰うよ」
コップとフォークを出してホルダーから出して、ピッチャーからコップに水を注ぎ皿の上の春巻きにフォークを刺す。1人であの調理器具を使って作るのはかったるいからこの時間の食事はアイクの冷凍食品に世話になることにした。食べた分の金額を支払うからと持ちかけたが全体から引けば大体均一になるから構わないということで可決したのは数日前だ。
「最近と言うよりは、俺に今の仕事が回ってきてからなんだけど」
1つ目の春巻きを水で流し込む頃にはアイクは俺の同室のと話していたから(話題はスポーツか何かのようだ。正直興味がない)俺は空いてる方に訂正しておくことにした。
「本当に、物好きですね」
「クリアは今何処にいる?」
「二言目でもうそれですか」
「何でもいいから答えてくれりゃそれでいいんだよ」
「先程ミスト・ヨファ・キルロイと共に資料室で本を読んでいるのを見かけました。恐らく移動はしてないと思われます」
資料室なんて呼んでいるが実際はかつての寮の住人達ここを出る際に荷物になるからと置いていった本の保管室に過ぎない。
「戻ってきたらちゃんと面倒見てね?」
「またそれですか」
「言っとかないと何かあった後に『何も言われませんでしたから』とか言われそうだと俺は思ってる」
「…………」
「じゃあ顔見てから出勤しますか」
「もういいのか?」
「うん」
あまり詰め込むと戻しそうだし。
空のコップにフォークを入れて同室のに渡してから俺は食堂を出た。
「クリアー!クリアー!俺これから仕事なんだよ顔見せてー!」

「メフィはあと対等だったら完璧なのにな」
「アレの場合不平等だから変態がそこそこ目立たなくて済んでるのですよ、アイク」
「私はなかなかおもしろい人間だと思うね、彼は」
「変態という点ではあなたも同類です」


これハリポタじゃなくて蒼炎だろ?!と思いつつも数合わせで入れてしまう。どう分類したらいいんだ……前の風切羽みたいだ。微妙な立ち位置。(しかも長い)
知人以上友人未満なので本当に「なんつう面倒なことしてくれたんだあの大馬鹿俺の時間が減ったじゃねぇかよ」という感じです。メイビーみたいなこと思ってくれるわけがない。ただ、嫌いと言うより苦手と言った方が正しい。飴と鞭でうまいこといつでも使えるよう離れないようにしてたんじゃないかと。そしてその場にいる人間により態度が全然違うから厄介だけどわかりやすい。なのである意味学校のどうでもいい連中より(態度豹変の)優先順位は低かったと言える。優先順位と気を使う量は比例の関係にあるからそれだけ素を出してたということだけど、まあ、性質悪い人だな!
ただし、最後の子は多分唯一の例外で優先順位は1番上だけど割と素。真っ黒い部分取り除いたらああなるのだろうか…それはそれで怖い。彼女関連も自然と上位になってるけどここは無意識かもしれない。現在の会社は彼にとって比較的居易い環境のようです。さっぱり気にしない人もいるし(アイク)素を出せる人もいるし(セネリオ他数名)カモもいるし(シノン、ガトリー)深く考えないようにする人もいるし(基本的に多いのはここ)お気に入りもいるし。気に入らない同居人もいるし他にも苦手な人はいるんだろうけど許容範囲内で収まったようだ。ちなみにメフィは苦手な人の名前は呼ばない。
同室の人間はアイク辺りが1番被害少ないかと思ったけど、この人でもある意味被害は少ないと思う。打ち消しあってる。空間内で渦巻いて隣に断片覗かせるだけで済んでる。(まあ、そんなに大きくはないということで)入室時期は経緯からしてソーンの方が少し早い感じだけど単にメフィの入社から寮入りまでの期間が長かっただけかもしれない。
あ、蒼炎女主人公の名前やっと出ました。クリアです。クロウ、クライム、クロース、クレインと「ク+ラ行」が続いたんで流れに乗ってみた。あとはルだけ。
食堂に関してずらずら書いて(これでも)かなり削ったりとかして時間掛かりました。本当に甲斐性無しだ自分。タイトルが特に錯乱してる。(銀魂で付けるようなタイトルだよこれは…)家庭で冷凍食品を多用してるイメージはないけどどうなんだろう。
ちなみに、これを書いた翌日(7月4日)の夕飯は(冷凍じゃない)春巻きでした。どんな偶然。

2006年7月中


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