異世界理論

「中途半端な異世界人って、よくわからないんですけど」
「それはだな」
委員長は箸を弁当箱の上に置いて黒板の前に立った。
「数学で∪と∩というのをやるが、まだやってないか?確か数Aだからまだか」
1人で問いかけて1人で納得されたけど、確かにまだやっていない。
「あれの説明の図とよく似ている」
委員長が黒板に円を2つ、3分の1くらい重ねて描く。
「『世界』を円に例えよう。こちらの円は団長や少年のいる『世界』だ」
そう言いながら右の円を黄色のチョークで塗っていく。
「一方、団長や少年がいないのはこの左の方の『世界』だ」
今度は左の円をピンクのチョークで塗りつぶす。円が重なった部分は2つの色が混ざって、分類するなら薄いオレンジ色や肌色と呼ばれるような色になった。
「少年の行動範囲は黄色の円の中なのに対して、俺の行動範囲は両方の円の中だ」
青のチョークで輪郭をなぞる委員長。
「つまり、異世界の人間でもあるしこの世界の人間でもあるという事だ!」
そして、重なった部分をドンと叩いた。
「ただし、こんなものは一部でしかない。まだまだ色々な『世界』があって異世界同士で重なっていたりもする」
「俺が今ここにいる『世界』も同じようになってるんですか」
「かもしれない。たまたま俺のもう1つの『世界』がそうなっているというだけであって、他に関してはさっぱりわからん!」
ここまで語っといてなんでまた。
「例えば、日本人夫婦がアメリカで出産したらその子供は何人だ?」
それは日本人だろう。
「その通りだ。だがこの例の場合その子供は日本とアメリカ、両方の国籍を持つ。つまりそういう事だ!」
「委員長の両親は異世界人なんですか?」
「それは『生みの親』と『産みの親』の違いだ。異世界人としての親は生きるの方の『生みの親』がいるし、両方をひっくるめた一般人としては産卵の方の『産みの親』がいる!」
委員長がさっき書いた異世界の原理の横に『生』と『産』を書き殴りながら説明してくれる。
どっちにしろややこしいんだが。あと、哺乳類なんだから産卵よりも出産の方がいいだろうに。
「俺にとってもう1つの『世界』の『生みの親』は神ではない。ただ『設定』を決める力と収束させる力は持っている。『生みの親』がややこしいと思ったら『設定』を決めて行動を制限したり簡略化したり回避フラグを設置したり出来る」
「聞いてる限りじゃ限りなく神に近いと思うんですけど違うんですか」
「俺は『生みの親』の意思なんぞ知らん。自分の意思で動いてるぞ。確かに似たようなもんだが違う。そうだな、強いて言うなら3分の1と0.33333以下略の関係に近いな」
「『生みの親』の意思では委員長の行動は決まらないって事ですか」
「『生みの親』は道路標識みたいなものだ」
「『設定』って最初から決まってないんですか」
「最初は特にないな」
「なんで委員長はそれを知ってるんですか」
「そういう『設定』だからだ」
「一体何を以って行動制限したり簡略化したりフラグ設置したりするんですか」
「知らん。『生みの親』は気まぐれだからよくわからん!」
この辺りは長門や朝比奈さんや古泉と同じらしい。委員長の言葉を借りるなら『設定』か。俺にとっちゃ『3年前』とハルヒが関わらない分偉大だが。
「まあでも、俺が思ってたよりは常識的な『生みの親』ですね」
回避フラグの設置なんて羨ましい限りだ。どうして俺は委員長のもう1つの『世界』の人間じゃなかったんだ。どうせならフラグなんて埋もれる可能性のあるものよりも、より確実で確定的な確立した回避ルートを希望するが。
「そうか?制限が設けられた記憶はないし、テストの問題が簡略化された事は1回もないし、回避フラグもこれまで生きてきた中で特になかったように思うぞ」
世の中そんなに甘くはないようだ。


書いててよくわからなくなってきた。要するに峰岸単体ではハースタンテスなんかで出る可能性がありますよということだと思います。(わかりやすいんだかわかりにくいんだか)
時系列では先月の拍手の『けれどだがしかしそれでも』の直後。産卵よりは出産は書いてから思い至った。生産だと被るんだよなと避けたのはいいとして、産卵って。

2007年3月中


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